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院長コラム

坐骨神経痛って何?

2025年03月27日

皆様こんにちは。桜の開花のニュースが届く頃になってきました。春といえば、私にとっては大好きなプロ野球が始まる季節。ナイターの時間が待ち遠しいのは小学生の時から変わりません(笑)。

さてさて今日は、坐骨神経痛のお話をしようと思います。耳にしたことがある言葉かと思いますし、経験された方もいらっしゃるかもしれません。整形外科領域の神経痛の中でもかなりメジャーなものですが、少し深堀していきましょう。

 

まず、図1をご覧ください。青く塗ったのが坐骨神経です。骨盤の中で第4腰髄(L4脊髄)神経から第3仙髄(S3脊髄)神経が吻合した部から始まり、骨盤から臀部・大腿後面を通って膝窩部の上で終わります。大腿部では、坐骨神経本幹から何本もの分枝が大腿後面に伸びます。膝窩部の上で終わった坐骨神経は脛骨神経・腓骨神経に分岐し、膝より足に向けて全周性に神経の枝葉を伸ばします。坐骨神経に刺激が入ると臀部から大腿後面、下腿から下は全周性に足先まで刺激が及ぶ可能性があります。図2はデルマトームの絵ですが、L4~S3脊髄神経の領域が坐骨神経領域となり、これらの領域の神経痛を総称して「坐骨神経痛」と呼びます(同じ下肢の神経痛でも、大腿前面や内腿は別の神経の支配領域であり、坐骨神経痛ではありません)。

では、どういった原因で坐骨神経に刺激が入るのでしょうか。主な刺激の原因は2つあり、1つは腰椎から、もう1つは骨盤からです。

  • 腰椎由来の坐骨神経痛

腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症、腰椎分離症・分離すべり症、骨粗鬆性椎体骨折および骨折後偽関節、など

 

これらは坐骨神経になる前のL4~S3脊髄神経(神経根)を圧迫する原因となり、坐骨神経の刺激源となります。坐骨神経痛の多くはこれら腰椎疾患に由来するため、まずこれらの検索を行うことから診察が始まります。

 

  • 骨盤由来の坐骨神経痛

臀部打撲、梨状筋症候群、仙骨骨折、骨盤内腫瘍、骨盤内手術による医原性損傷など

 

尻もちをついた際に、臀部の坐骨神経起始部付近を打撲し神経に刺激が入ったり、打撲後の血種(血の塊)が神経を圧迫したりすることがあります。また、坐骨神経が臀部を通る際に梨状筋という筋肉の下を通過するのですが、中には梨状筋の筋内を割って通過する場合もあり、しばしば筋肉で圧迫されて刺激を受けることがあります。一方稀ではありますが、骨盤内腫瘍(子宮・卵巣・消化管腫瘍)が直接圧迫する場合もあります。

坐骨神経痛は、あくまで症状から見た病名です。例えば、よく患者さんから「坐骨神経痛とヘルニアは違うのですか?」と聞かれますが、正確に言葉にすると「腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛」となります。坐骨神経痛の診断は理学所見(診察所見)である程度目星がつきますが、その原因を突き止めるために、MRIが必要になることもあります。

治療は薬物療法、物理療法や運動療法、神経ブロック、手術、と整形外科領域のあらゆる方法を疼痛の強さや神経痛の原因に合わせて各種組み合わせて行います。例えば、神経障害性疼痛の内服薬の中には副作用のため、徐々に用量を増やしていく必要がある薬があります。一方、少量の内服のときは薬の効きが弱いことがあります。よって内服薬のみで除痛効果が得られるようになるまでは神経ブロックを併用して除痛を図ります。疼痛が緩和してくれば運動器リハビリテーションを組み合わせ、社会復帰を目指します。

当院では患者さんの生活スタイルや活動性に合わせて治療法を提案させて頂き保存治療を行っております。一方、いたずらに保存治療にこだわると適切な手術のタイミングを逸することになりますので、必要な場合は高次医療機関に紹介させて頂いております。坐骨神経痛でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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